ドラマ・ハゲタカの第1回から第3回(前半)は『ハゲタカ』、第4回以降(後半)は『ハゲタカU』(旧名『バイアウト』)が原作である。
前半、後半ともにドラマはかなり原作をモディファイしているのだが、とくに後半は全く別物と言っていいくらいプロットが違っている。
筋書きにおけるドラマと原作との異同は措くとして、原作では『ハゲタカ』と『ハゲタカU』で著者が描き出したかった点が大きく異なる。
NHKハゲタカ・サイトの「原作への想い」で、作者・真山仁氏は次のようにまとめている(以下便宜上『ハゲタカ』を『T』、『ハゲタカU』を『U』と表す)。
『T』では「失われた10年といわれた日本経済の崩壊を招いたのは、ハゲタカではない。
我々一人ひとりの心の隙にわずかづつ堆積した慢心だったのではないか。それが、小説『ハゲタカ』を書こうと思ったきっかけだった」。
これに対し『U』(バイアウト)では「『ハゲタカ』を書き終え、改めて日本を見渡した時、我々の前には、もっと大きな壁が立ちはだかっているように感じた。
それは、それまでの日本という国や、社会という枠組みとして物事を見るのではなく、日本人一人ひとりがどう生きるかを決めなければいけない時代が到来したのではないか? ということだった」。
以上に加えて、どうも作者は『U』で、『T』では出せなかった「娯楽小説」の要素をかなり押し出そうとしたように思える。
『U』は一言であらわすと「経済活劇小説」というところか(そんな用語はないが)。
あまりネタばらしをすると販売妨害になるので控えねばならないが、『T』の柱が、「過去の惰性から抜けきれない日本の経済・社会を覚醒させるハゲタカ」というところにあったとすると、『U』は、「企業買収を通じた国際軍産ファンドと鷲津個人との闘い」が中心軸である。
登場人物は同じでも、両者の間には『点と線』と『ゴルゴ13』ほどの違いがある(かなり大胆に言えば、だけど)。
もともと別物として書かれたものなのだ(だから当初はタイトルが違っていたんだろう)。
原作のこの違いをドラマでは無理やり共通のプラットフォームに載せ、ひとつのパッケージに詰め込んだという印象を拭えない。
後半の展開がやけにドタバタして地に足の着かない感じがするのは私だけではあるまい。
※ 現在、NHKハゲタカ・サイトではこの真山仁氏の「原作への想い」は削除され、代わりに「原作者メッセージ」という別の文章が掲載されている(2007年8月19日現在)。